結婚指輪の職人が独自に開発手作りする金属の手指義手

きっかけは関節の動かせる装身具としての指輪作りでした。従来からあるシリコンで作られた肌色の指のエピテーゼではない新しい義指

ジュエリー制作で培ったノウハウで、関節の曲げられるフィンガーリングのような義指の開発に取り組みます]

義指のサイズは指の号数だけでなく関節までの長さと曲げた時のサイズ

従来のエピテーゼの分野になかった関節を曲げられるチタン製リング。デザイナーが指に合わせたチタンの義指を制作します。

[チタン製装具の手指義手:指を失ったひとのための義指としての動く指輪作り

義指のサイズは指の号数だけでなく関節までの長さと曲げた時のサイズ

指輪サイズの測り方 サイズ感攻略法

指輪を測り続けてきました。指のサイズは体調によって常に変わります。
この指=何号と決まった数値で表せません。そして関節も曲げたら長さも変わります。その人の指のタイプによっても大きく違いが出ます。
指を曲げればその分の筋肉が横に押し出されて関節を折り曲げグーチョキパーができる仕組みですから、その変化も加味してゆとりを折り込んだサイズで制作しています。

関節を折り曲げた時に全体が金属で覆われていると、金属はゴムのように延びてはくれませんので、ジョイントを設け、指の動きに沿ってくれるように工夫します。
関節部分の曲げ延ばしのパーツ作りには、「鋼の錬金術師」作品に出てくる鎧のような身体のパーツ描写を参考にしてそれを基にデッサンを立体化しています。

指輪として産声をあげ、羽化して義指になったデザイン

関節リングのデザインをする独自の手法をご紹介します。


20131025-steam8908.jpg

独創的なデザインは、こんなふうにして生まれます。

■指輪のデザイン第一段階
指輪でも、ペンダントでもブレスレットでも、シルバーアクセサリーでも、デザインを考えるときは、机のパーツたちと遊びます。これまでに作り、作品にはなれなかったパーツ、組み上げられなかったパーツたちが引き出しに眠っています。いつか、作品として出番を待っているシルバー950の断片や、ちょっと長さが足りなかったためにサンプルで終わってしまったチタンアクセサリーの破片などです。断片的な形態、目的を持たない形態というのは、とても興味深いフォルムをしているのです。
それらを、もっとおもしろいかたちがないかと日頃、デッサンするようにしています。
それらを再構築するうちに、まったく見たこともないような不思議なかたちが生まれるのです。こんなおもしろいかたちができた。どうやって新しいデザインに活かそうかと、わくわくする瞬間です。デザインは涌いてくるように、降ってくるように無限に生まれてきます。

■指輪のデザイン第二段階の作業
デザインするときに大事にしている点はかたちと構造のオリジナリティー。
その無限に生まれてくるフォルムの中に秩序を与えてデザインとして出していくという作業をします。ともすると、ガラクタを集めただけのジャンクにならないよう、実際に指輪になったら、ペンダントになったら、もしチタンでアクセサリーと作ったらどうなるか、組合せ方は可能か、シンプルか、そして着け心地かどうかなどを考慮して、フォルムを練り直していきます。
ここから、思いがけないパーツを組んで関節に着けるような、これまでの指輪の概念を超えた新しい指輪のフォルムが誕生してきます。
それを実際に指に着けて曲がるのか、着用するとどこがどうなのか、いらないパーツ、付け足すパーツをさらに詰めていきます。
削っていくデザインと肉付けしていくデザイン、プラスとマイナスの両方から検討します。
指との一体感も気にして作ります。

■関節リングデザイン第三段階
ここまでくると、本体が関節リングのかたちをしています。個性重視なデザインに走るあまり、奇をてらったものになってしまっては美しくありません。あくまでもそこに出来る空間をとらえて最小限のデザインをします。小さな空間に凝縮させる作業です。
すべてのパーツ、あらゆるデザインの構造は存在意味を持たなければいけません。なぜそうしたかたちをしている必要があるか、を自問します。どうしても必要なパーツで組み上げたものが初めて指輪という作品となります。
そうして出来たのが関節リングです。
そして数年後に装身具のわくを超えて装具としての義指として進化したのが関節リング義指です。