結婚指輪の職人が独自に開発手作りする金属の手指義手

きっかけは関節の動かせる装身具としての指輪作りでした。従来からあるシリコンで作られた肌色の指のエピテーゼではない新しい義指

ジュエリー制作で培ったノウハウで、関節の曲げられるフィンガーリングのような義指の開発に取り組みます]

従来のエピテーゼの分野になかった関節を曲げられるチタン製リング。デザイナーが指に合わせたチタンの義指を制作します。

[チタン製装具の手指義手:指を失ったひとのための義指としての動く指輪作り

関節が曲げられるリング

チタンとシルバーの組合せリングから義手 義指まで

第二関節と指の付け根までをつなぐパーツは大きなU型を開け空間をとっています。これは、グーなどの握りこぶしを作って関節を思い切り曲げてもパーツが動作の邪魔にならず、指の動きに沿う構造となるようにデザインしてあります。指というのは骨と指の筋肉が複雑な動きをしますので、そのしくみに金属でできたリングが柔軟に協調できるよう配慮した設計をします。
シルバー製の関節リングを造りはじめた1999年から、2000年にチタンを使い始め、徐々にチタンの色とシルバーとのコントラストをデザインに取り入れ始めました。

制作上苦労する点
指がないところに見栄えの良い指のかぶせものを作るのと、指があるところに、はめる指輪とでは、作り方がまったく違います。
そして義指を作る場合は、指のない部分を再現し、それを指につなげていくジョイントが必要になります。
指にかぶせると、肥大化してしまってはカッコよくありません。
しかも、指にはめて日常使うのに、危険だったり邪魔になってもいけません。
指がない部分に新しく造形物を乗せる場合は、他の指と同様の細さで作ることができるので問題はないのですが、それを指につなげる部分はどうしても複雑なジョイントを作るのでかさばってしまいます。
いかに動きよく、しかもかさばらずに、他の指の動きを妨げないように安全に設計するか、ひとりひとりのケースバイケースで、試行錯誤している状態です。

人間工学の見地から

指を欠損したことを隠すための従来の肌色の義指が、カムフラージュのためという、いわば後ろ向きな面だとしたら、それとは反対に、積極的に義指を駆使して、キーボードをたたきたい、手すりにつかまりたい、個性を主張したいという、逆に自慢したい指輪のような前向きになれる義指は、ひとのフィジカルな面だけでなく、メンタリティの面で、人をより能動的に変える側面を持っていると言えます。
仕事で指を欠損したような場合は、硬い金属が指に触れることも多く、そうした危険から金属製の強い義指は安全面での利点も大きいものがあります。
しかし最も大きいのは、欠落してしまったという穴がぽっかり空いた気持ちを埋めたいという願望です。
指がなくて不便だから義指をツールとして使うということよりも、かっこいい指を手に入れて、個性なんだと自慢できるような義指でおしゃれを楽しむような、指を欠損していない人でも着けたくなるような、気持ちを上げてくれるような。そんな義指が作れたら、お役に立てるといいなと思うのです。